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5月29日 栗の害虫 クスサン2

前回 5月26日 栗の害虫 クスサン で書いたのですが クスサン幼虫の絹糸腺から釣り糸のテグス(天蚕糸)を作成できる。

 

 もう少し調べてみると、宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』イーハトーヴてぐす工場 が出てくる。

 

宮沢賢治1932年(昭和7年)3月、『児童文学』第二冊に「グスコーブドリの伝記」発表。

ということは、昭和初期 クスサンを使ったテグス工場が存在したのかな?

 

工場で作っていたテグスは 絹糸腺から作る太いテグスではなく、繭を煮て細い絹糸を取るやりかたのようです。

 

野蚕の飼育では、「山つけ」と云って、春、コナラやクヌギが芽吹いたところに卵をつけて、その木で幼虫を育て、繭をつくったら採集するという方法がとられていると思います。稲作と同じくらい古い日本の文化です。

生糸文化を想い起させる天蚕・ヤママユ - かわさき自然調査団より

 

クスサンの学名は Saturnia japonica。日本のヤママユガ。日本のなのです。

 

クスサンの成虫は口器を欠き,全 く摂食できない 、 成虫の寿命は雌雄 とも平均 5日前後 だそうです。

クスサンの成虫期における生態 - Core 増沢利和 著より

春に生まれて秋に没する短い寿命ですね。

 

栗にとって「クスサン」は大敵ですが ちびっと愛着も。

 

クスサンの大量発生で困っているけど 「東京都の保護上重要な野生生物種」にクスサンが入っている。

クスサンの成虫は、光に向かっていく習性があるので 常夜灯の東京は生存できないのかも。

東京都の保護上重要な野生生物種(本土部) ~東京都レッドリスト

 


宮沢賢治『グスコーブドリの伝記』

 イーハトーヴ てぐす工場 が出てくる。

 

 イーハトーヴ てぐす 工場。

  前略

 「ここへ 網を 掛けるの?」
 「掛けるのさ。」
 「網をかけて 何にするの?」
 「てぐすを 飼うのさ。」
 見ると すぐブドリの前の 栗の木に、 二人の男が はしごをかけて のぼっていて、一生けん命 何か網を 投げり、 それを 操ったりしているようでしが、網も糸も いっこう 見えませんでた。


  中略


 森じゅうの 栗の木に 網が かかって しまいますと、てぐす飼いの男は、 こんどは 粟のようなものが いっぱい ついた板きれを、どの木にも 五六枚ずつ つるさせました。 
そのうちに 木は 芽を出し て 森は
まっ青 になりました。
 すると、木に つるした板きれら、 たくさんの 小さな 青じろい虫が 糸を つたって 列になって 枝へ はいあがっ て行きました。
 ブドリたちは こんどは 毎日 薪とり をさせられました。
 その薪が、家のまわりに 小山のように積み重なり、栗の木が 青じろい ひものかたちの花を 枝いちめんにつけるころになりますと、あの板から はいあがって行った虫も、ちょうど 栗の花のような色と かたちになりまし た。 
そして 森じゅうの 栗の葉は、 まるで 形もなく その虫に 食い荒らされてしまいました





 





  中略



それから まもなく、虫は 大きな黄いろな繭を、網の目ごとに かけはじめ ました。
  すると てぐす 飼いの男は、狂気 のようになっ て、ブドリたちを しかりとばして、その繭を 籠に集めさせました。
それを こんどは 片っぱしから 鍋に 入れて ぐらぐら煮 て、手で車を まわし ながら 糸をとり まし た。
 夜も昼も がらがら がらがら 三つの糸車を まわして 糸をとりました。
こうして こしらえた黄いろな糸が 小屋に 半分ばかりたまっ たころ、外に 置いた繭からは、大きな白い蛾が ぽろぽろ ぽろぽろ 飛びだしはじめまし た。
 てぐす飼いの男は、まるで鬼みたいな顔つきになって、じぶんも一生けん命 糸をとりましたし、野原のほうからも 四人の人を 連れてきて働かせました。
 けれども 蛾のほうは 日ましに多く出るようになっ て、しまいには 森じゅうまるで 雪でも飛んでいるようになりました。


   後略


宮沢 賢治 グスコーブドリの伝記 
青空文庫より